何かと話題を振りまく西野氏だが、彼の行動や発言は実に真っ当であり、クリエイティブな仕事に携わる人に対して今後の示唆を与えるものだ。ぼく自身もいい意味でものすごい衝撃を受けた。無料公開など賛否両論あるがその辺の判断は各自に任すとして、純粋に絵本として見てどう思うのか。

ぼくが読んだのは無料公開されたネット版です。
大ヒット中の絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開します

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タイトルの雰囲気はこれに似てないか

最初にこの本を見たときにアレっと思った。なんかあれに似てるような。。
Nightmare Before Christmasのロゴタイプだ。
nightmare
entotsu
もちろん一つ一つをしっかり見ればかたちはぜんぜん違うのだが、醸し出す雰囲気や構成なんかはかなり似ているというか意識してるというのか。。Tim Burton'sのとこもAkihiro Nishino'sってなってるし。
 

完全なるフィクションの世界を見せてほしかった

登場人物は白人のような見た目をしていて名前も外国風だ。ところが描かれている風景を見ると日本語だし、かつて渋谷にあったロープウェイが描かれていたりスチームパンク風(?)だし。

時代設定もよくわからない。
少年少女たちの服装はあまりに現代的だが、ルビッチだけは山高帽と蝶ネクタイ。煙突掃除なのに。母親は普通のいまっぽい感じなのに。

それら全てをひっくるめて混沌とした状態を描きたかったのかもしれないが、どうもチグハグな印象が否めなかった。いろんな要素の寄せ集めでなく、自らが作り出した奇妙な風景や人物像が見てみたい。
 

道徳的な絵本はつまらない

この本を読み終えるとすぐに西野氏(の写真)が登場して絵本の解説を始める。彼の行動や思いをそのまま落とし込んだストーリーと言いたいのだろうが、あまりに直接的すぎるのと、「信じぬくんだ。たとえひとりになっても」というのが道徳的な内容っぽくてそんなに新鮮味を感じさせないのが残念。

西野氏が考えていることってそんなことだったのだろうか?

西野氏が軽やかにやってのけた無料公開からのAmazon売上ブッチギリ、賛否両論あるけどそんなん知ったこっちゃねえ、というような読む人を挑発する内容の絵本が見たいよ。もっとギラギラしてぼくたちや世間をイラつかせてアッと言わせてほしいよ。
 

この世界観の前提となるものが疑問

フィクションの本を読むときには、前提となる世界観が共有できることが必要だ。それはハナから覆される。ぼくが気になって仕方なかったことは次の4つだ。
 

「なぜこの町は煙突だらけなのか」
タイトルになってるくらいだからそれが効いてくるのかなと思いきや、それが全く示されないままにストーリーは進んでゆく。これだけ煙突があるということは工業が盛んなのか、技術レベルは相当高いはず。空に星があることは知識として持っていないことはおかしい。写真くらいあるでしょ。 

「心臓が運ばれていること」

なんで?いきなりこれが出てくるからそういうことが普通に行われている世界なのかと思いきや特にこれも説明がない。誰の心臓でどこに行く予定だったのか。こういうことが普通に存在している世界であるならば、プペルのような存在も別に誰からも変に思われないのでは?非日常が日常化している世界なのにバケモノはやっぱりバケモノ扱いなのはピンとこない。

心臓だけがリアルな人間の器官であって、その他の器官、脳みそが時計とか耳はゴミとか、そのへんのアンバランス感もよくわからない。それらも「夜空をかける配達屋さん」が運んでるんじゃないの?


「なぜハロウィン?」

「外の世界を知らない町」といっている。それだけ隔絶された世界で非常に俗っぽいイベントと化したハロウィンが行われている不思議。
 

「4000メートルの崖で囲まれている」
というはずなのに簡単に海に出られている。
 

「風船で空を飛ぶ」
水素とかヘリウムでなければ上昇はできないはず。
プペルはそれを出せたのか。
風船を口で膨らませて全然浮かばないことにショックを受けた経験は誰しも持っているはず。
そこをフィクションだから、と片付けてしまうのは腑に落ちない。
 

この本は手にとって読みたい

この絵本がネットで無料で公開されたことはスゴイと思う。でもやっぱり絵と文章が完全に分けられてスクロールさせながら読むのはピンとこなかった。ネットでタダで読んだ人はかえって本を買いたくなるんだと思う。そこも含めて感心した。
 

以前の絵のほうが魅力的

個人的な感覚かも知れないが、以前のモノトーンの絵柄のほうが魅力を感じられた。今回の絵本は西野氏自身が描いたものではないとのことだが、色の乗せ方とかどこかに既視感を感じてしまうものだった。
 

個人的にはこういう絵のほうが彼の才能が生きてくる気がする。

もっとたくさんの作品を!

どんな売り方をしてもいいので、もっともっと作品を生みだし独自の世界観を発揮してほしい。これからが楽しみです。

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